断食によって作り出される「ケトン体」で若返り?!

近年、各メディアでは様々なダイエット・健康方法を紹介していますが、中でも注目を集めているのが「断食」による若返りです。
なぜ、断食を行うことで若返り効果が期待できるのでしょうか?
今回は、断食と若返りの関係性についてご紹介していきます。
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最新の研究結果で分かってきた断食の効果
以前テレビで断食はダイエットというイメージがあるものの、本来は様々な健康効果が期待できる行為だということが明らかになりました。
これまで断食に関して具体的な健康効果などは、数値で研究結果になりにくいことから調べられてきませんでした。

しかし、2011年の米国心臓病学会において、毎月最初に訪れる水曜日の1日間、水以外は摂取しない断食を行うモルモン教徒の健康状態を調査したところ、同じ地域のモルモン教徒ではない住民と病気の発症率を比較すると心臓病で39%、糖尿病に至っては52%低いことが明らかになったのです。
さらに、マウスを使い毎日エサを食べるグループと3日間ずつ食べられる日と断食を交互に行うグループに分けて経過観察すると、断食をしていたグループのマウスは太りにくい体質になり、3ヶ月間体質が続くことも分かっています。
では、なぜ断食を行うと体質に変化が表れてくるのでしょうか?
これは、恐らくサーチュイン遺伝子と呼ばれる若返り遺伝子が関係しているのではないかと言われています。
サーチュイン遺伝子は、1999年に発見された遺伝子で、免疫細胞の異常や活性酸素の発生を抑制してくれる「サーチュイン」という酵素を活性化させる働きを担っています。
サーチュイン遺伝子の働きによって体内の様々な部分に影響し、体質を変えていくことができるのです。
ただ、サーチュイン遺伝子は空腹状態の時しか働きません。
そのため、断食によって空腹状態を長期間味わうことでサーチュイン遺伝子が活発になり、体質改善につながっていきます。
断食で変わるエネルギー源
通常、人間は糖質や脂質をエネルギーに変えて体を動かしていきます。
特にご飯や小麦、イモ類などの炭水化物に含まれている糖質・ブドウ糖は、体内ですぐにエネルギー源として利用でき、体温を維持したり体を動かせるようにしたり準備しています。
エネルギー源となるブドウ糖は体内に蓄積しておくことができません。
ブドウ糖の集合体となるグリコーゲンは蓄積することも可能ですが、グリコーゲンも蓄積量が限られており、12時間で枯渇してしまいます。
そのため、半日もすれば体内のブドウ糖は全てなくなってしまうのです。
エネルギー源がなくなった状態になると体は危機感を示し、中性脂肪を肝臓に集めて新しいエネルギー「ケトン体」を作り出していきます。
ケトン体はブドウ糖の代わりに脳のエネルギーとなったり、他の部分でもエネルギー源として活用されていきますが、ケトン体によって遺伝子の働きを変えられる効果があるのではないかと予測されているのです。

まだ確実にそういった効果が研究で明らかになったわけではありませんが、ケトン体によって遺伝子の働きが変わると脂肪をエネルギーに変えやすくなり、太りにくい体質が作れると期待されています。
断食による若返り効果
断食によって太りにくい体質へと変われることが分かりましたが、他にも断食によって若返り効果が期待できます。
この若返り効果についても既に研究が行われ、結果が出ています。
アメリカのウィスコンシン大学で行われた実験によると、生まれたばかりのアカゲザルを2つのグループに分け、育てていきました。
1つのグループには通常通りのエサを、もう1つのグループには最初のグループより3割近く少ないエサを与えてカロリー制限していったのです。
24年後の生存率を調べてみると、通常通りのエサを食べていたグループは半数以上が死亡してしまったのに対し、カロリー制限をしていたアカゲザルは8割以上生き残っていたのです。
また、この頃になると人間で言えば70歳近い年齢なので、シワも多く毛が抜け落ちてしまっているサルも多いのに、カロリー制限していたグループのサルは見た目も若々しい状態でした。
これは、サーチュイン遺伝子による活性酸素の抑制が影響しているのではないかと考えられます。
活性酸素は、体内に侵入してきたウイルスなどから守るために作られているものです。
活性酸素自体は悪いものではないものの、ストレスや様々な影響から活性酸素が異常に作られてしまうと健康的な細胞まで攻撃してしまい、老化の促進につながってしまいます。

しかし、サーチュイン遺伝子が働くことで活性酸素の働きが抑制され、健康的な細胞が傷付かずにそのままの状態で残ってくれるのです。
老化を完全にストップさせることはできませんが、ある程度老化を遅らせたい、若返りたいと考える方は断食を取り入れてみると良いでしょう。
断食は健康リスクを招いてしまうこともある?
断食によって万病の元である肥満体質を脱却することができたり、若返り効果が期待できたりと、様々な健康効果が表れることをご紹介してきましたが、一方で断食を行うことによって健康リスクを招いてしまう場合もあります。
一体なぜ健康リスクを招いてしまうのでしょうか?
正しい方法を知らずに行うとストレスの元になる
正しい方法を知らないまま、ただ食事を抜くだけでいいと考えて断食を行ってしまうと、体は突然の変化に大きなストレスを感じてしまいます。
ストレスを感じたせいで眠くても寝られなかったり、イライラしてしまうなどの影響が表れてしまうのです。
また、物を食べない状態が続くせいで胸焼けを起こしたり、「食べちゃいけない」という強い思いがあるせいで摂食障害が誘発されてしまったりと、心身共に悪影響を及ぼしてしまいます。
このような状態は決して健康的とは言えません。
まずは正しい方法を知ってから断食を始めましょう。
まずはかかりつけの医師に相談する
ケトン体が増えることで体質が切り替わりますが、実は持病を持っている人が断食を行ってしまうと体内でケトン体が増えすぎて、呼吸困難・昏睡といった状態に陥ってしまいます。
特に心臓病や腎臓病、糖尿病などの持病がある人は無理な断食を行わないように気を付けてください。
また、高齢者や自覚がなくても脱水症状を起こしている人も危険です。
無理に行わず、まずはかかりつけ医に相談して断食をしても良いか聞いてみましょう。
個人で行うなら半日、最大でも24時間までに留める
近年は断食道場というものもあり、3日~1週間という長い期間断食を行えるところが増えてきています。
しかし、あくまでも断食道場では看護師などの第三者がきちんと見守ってくれているので安心して行えるものです。
1人で行う場合に長期で断食してしまうと、健康面に悪影響が及んでしまう可能性があります。
個人で行うなら半日程度を目安に断食し、最大でも24時間までに留めるようにしましょう。
今回は断食による様々な効果をご紹介してきました。
これまでケトン体が増えることは悪いことと認識されてきましたが、最新の研究によってその考え方が少しずつ変わってきています。
もちろん、持病を持っている方や高齢者の方にとっては危険な状態に陥ってしまう可能性もありますが、健康的な人が無理をせず、正しく断食を行えば体質改善につながるのです。
まずは断食の正しい知識を身に付けてから、若返りを目指してチャレンジしてみてください。